人工股関節について
関節疾患の多くは比較的にゆっくりと症状が進行する慢性型のため、「加齢」という理由で見過ごされてしまうこともあります。しかしその結果、疾患の度合いが進んでしまうと、関節に強い痛みや熱が発生したり、歩く・座る・立つといった基本的な動作が制限されてしまう事態になりかねません。
人工股関節置換術は、主に変形性股関節症や関節リウマチ、骨頭壊死等の関節疾患を治療する代表的な手術療法のひとつです。
■人工股関節置換術とは
人工股関節置換術とは、傷ついた股関節の損傷面を取り除いて、人工関節に置き換える手術です。
人工関節は、金属製のステムとボール(セラミック製のものもあります)とソケット、そしてソケットの内側にはめ込む超高分子ポリエチレン製のライナーでできています。このライナーは、軟骨の役目を果たしているので、ボールをライナーに組み込むことにより、スムーズな関節の動きが得られます。
■人工股関節置換術の流れ
《準備中》
■入院から退院まで
1. 手術前
インフォームドコンセント
医師からインフォームドコンセントと呼ばれる術前説明があります。
- インフォームドコンセントの主な内容
- ●手術の目的
- ●手術によって期待できる効果
- ●手術方法
- ●術後の注意点
- ●麻酔の危険性について
- ●輸血について
- ●合併症について
入院と手術の準備
手術の前に、必要な検査を受けます。服用しているくすりがあれば必ず病院のスタッフに伝えてください。
出血をおこしやすいくすりは、一時的に服用を中止していただくことがあります。手術を受けられる体調であることが確認されたら、入院のための準備品などの説明を受けます。
自己血貯血(じこけつ/ちょけつ)
貧血の方や出血のリスクがある方は、輸血による合併症のリスクを避けるため自分の血液を前もって採血して、 手術まで保管しておく場合があります。
2. 入院
糖尿病の方で、血糖値のコントロールのために手術前日より早く入院が必要となる場合もあります。 手術の日取りに合わせたスケジュールが組まれます。
手術準備
当日は手術用の着衣に着がえ、腕に小さなチューブ(静脈ライン)を挿入します。このチューブは、手術中に抗生物質やその他のくすりを投与するために使います。
麻酔
手術室に入ると麻酔がおこなわれます。麻酔は全身麻酔で行います。麻酔が十分に効いてきたら、消毒液を使って患部を消毒します。
手術開始
股関節の中に人工関節を入れるため、皮膚を切開します。
損傷骨の切除
手術に必要な程度、骨が見える状態になったら、専用の器具を使って損傷のある部分を取り除き 、人工関節に合わせて骨の形を整えます。
人工関節の固定
医師は人工関節がしっかりと固定され、十分に機能することを確かめてから、切開した部分を縫合します。
縫合
切開した皮膚を元通りに縫い合わせます。状況に応じて排液管(ドレーン)を傷口に挿入する場合があります。
手術終了
皮膚の縫合が終わると、傷口を滅菌(めっきん)フィルムでおおい、帰室します。
手術室への入室から病棟への帰室までの目安は概ね3時間から4時間程度で、個々の状況によって変わります。
3. 手術後
麻酔が覚めてくると、ゆっくりと意識が回復してきます。看護師が適宜、血圧や体温、足の動きなどをチェックします。
また、手術直後の痛みを取り除くため、痛み止めのくすりを投与しますが、痛みがひどい場合は遠慮せずに看護師にお伝えください。
リハビリテーション
人工股関節周囲の筋肉を強化し、バランスや可動域を回復させるために、徐々にリハビリテーションを始めます。
また、理学療法士が最適な運動をおこなう手助けをしてくれます。いずれも日常生活への復帰を目的とした内容になります。
退院
回復が十分であると医師が判断したら、まもなく退院することができます。
具体的には、安定した歩行・階段昇降ができ、トイレ・入浴などをご自身ひとりでできるようになることが退院の条件となります。